本記事は、国内不動産クラウドファンディング4社(CREAL・COZUCHI・TECROWD・OwnersBook)が 公開しているファンドデータ計822件を横断的に集計・分析したレポートです。表面的な利回りの 高さだけでなく、運営会社の上場有無・実績公開の有無・案件規模の集中度という複数の 軸から、4社それぞれの特徴を比較します。

以前はヤマワケエステートを比較対象に含めていましたが、2025年の複数ファンドでの償還遅延、 2026年2月の行政処分(資金流用を理由とする業務停止命令)を受け、比較対象から除外しました。 経緯・詳細はケーススタディ記事で解説しています。

基本データ比較

プラットフォーム運営形態件数平均利回り平均運用期間
CREAL上場グループ145件4.63%19.3ヶ月
COZUCHI非上場146件7.58%12.4ヶ月
TECROWD非上場100件9.25%19.3ヶ月
OwnersBook上場グループ431件5.21%12.0ヶ月

OwnersBookのみ、他3社(匿名組合出資型)とは異なる貸付(ソーシャルレンディング型) スキームです。利回りの絶対値だけでなく、この法的な違いも踏まえて比較してください。 詳細はOwnersBookの詳細記事を参照してください。

はじめる前に確認したいポイント比較

利回り・運用期間だけでなく、実際に口座開設・入金・出金する段階で気になる実務的な ポイントも4社横断で比較しました。詳細な条件は各社の詳細記事をご確認ください。

CREAL

中途解約・換金
原則不可(8日以内はクーリング・オフ可)
出金手数料の目安
楽天銀行宛105円/他行宛150〜229円
募集方式
先着方式
会員ランク制度
あり(6段階のランク制)
CREALの詳細を見る →

COZUCHI

中途解約・換金
条件付きで可(手数料3.3〜5.5%)
出金手数料の目安
月1回無料、2回目以降330円
募集方式
先着方式
会員ランク制度
なし
COZUCHIの詳細を見る →

TECROWD

中途解約・換金
原則不可(8日以内はクーリング・オフ可)
出金手数料の目安
楽天銀行指定なら無料
募集方式
先着+先行抽選枠あり
会員ランク制度
あり(会員クラス制)
TECROWDの詳細を見る →

OwnersBook

中途解約・換金
原則不可
出金手数料の目安
一律330円(優待会員等は無料)
募集方式
先着86%・抽選14%
会員ランク制度
あり(プラチナ会員等)
OwnersBookの詳細を見る →

特筆すべきはCOZUCHIだけが中途換金制度を持つ点です。他3社は原則として 満期まで資金が拘束されるため、急な資金需要に対応できる余地という意味では明確な違いがあります。 また会員ランク制度は、CREAL(累計運用資産残高に応じた自動判定)・TECROWD(会員クラス制度)・ OwnersBook(プラチナ会員等)にはあり、COZUCHIには確認できませんでした。制度の有無・ 設計思想はそれぞれ異なるため、詳細は各社の詳細記事・公式サイトでご確認ください。

利回り×運用期間の全体像

4社822件を1枚の散布図に重ねると、件数の多いOwnersBook(431件)の点が他社を覆い隠してしまい、 件数の少ないCREAL(145件)などが見えにくくなります。そこで、各社を個別のパネルに分けて表示し、 灰色の点で「市場全体の中でのその社の位置」も分かるようにしました。

利回り×運用期間 散布図(4社・パネル別)プラットフォーム別の利回り×運用期間 散布図(社ごとに独立したパネル)。灰色の点は他社を含む市場全体の参考位置。横軸は運用期間(月)。短期〜長期まで見やすくするため、目盛りの間隔は均等ではなく1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月…と倍々になっている点にご留意ください。

OwnersBookは431件と件数が多く、利回り5%前後・運用期間10ヶ月前後の狭いレンジに密集しています。 CREALは件数は少ないものの低利回り・長期側に分布し、COZUCHIは極端な高利回り・短期の外れ値を数件持ちつつ 大半は中間的な水準です。TECROWDは中央からやや高利回り側に分布しています。

募集金額規模の違い

募集金額分布(4社)プラットフォーム別・案件あたりの募集金額分布(左)と募集総額(右)。

1案件あたりの募集金額(中央値)は、OwnersBookが4社の中でもっとも小さく、CREAL・COZUCHI・TECROWDは 比較的近い水準に分布しています。一方で募集総額(右のグラフ)で見ると、COZUCHIが1,430億円と際立って大きく、 OwnersBookも431件という件数の多さで826億円まで積み上げています。「1件あたりの規模」と「累計実績の大きさ」は 別の指標である点に注意してください。

10万円を投資したら? 想定利益シミュレーション

「利回り○%」だけでは金額感がつかみにくいため、各社の平均想定利回り・平均運用期間をもとに、 仮に10万円を平均的な案件に1回投資した場合の想定利益(税引前)を計算しました。想定利回りは年利換算で表示されるのが業界慣行のため、「利回り × 運用期間 ÷ 12ヶ月」で算出しています。

プラットフォーム平均想定利回り平均運用期間10万円を1回投資した場合の想定利益(税引前)
CREAL4.63%19.3ヶ月約7,447円
COZUCHI7.58%12.4ヶ月約7,833円
TECROWD9.25%19.3ヶ月約14,877円
OwnersBook5.21%12.0ヶ月約5,210円

運用期間が短い=資金の再投資サイクルが速いということでもあります。参考として、同じ資金を1年間に 何回転できるかの目安(12ヶ月 ÷ 平均運用期間)も示します。

プラットフォーム年間の想定再投資回数の目安
CREAL約0.6回/年
COZUCHI約1.0回/年
TECROWD約0.6回/年
OwnersBook約1.0回/年
上記は複数ファンドの平均値を用いた簡易シミュレーションであり、特定の案件の条件を示すものではありません。実際の利回り・運用期間は案件ごとに異なり、過去の平均が将来の成果を保証するものでもありません。

100万円を4社に分けたら? ポートフォリオ・シミュレーション

1社・1案件だけのシミュレーションでは実際の投資行動(複数案件・複数社への分散)を反映しきれないため、 100万円を4社にどう配分するかで3パターンを試算しました。数字の大小だけでなく、「1社への依存度」も あわせて確認してください。

ポートフォリオ配分想定年間利益(100万円・単利ベース)集中度の注記
積極型(攻め)TECROWD60%・COZUCHI40%約85,820円4社の中で利回り水準が相対的に高い2社に厚く配分する構成
バランス型CREAL25%・COZUCHI25%・TECROWD25%・OwnersBook25%約66,675円4社均等配分。1社あたりの依存度を25%に抑える構成
安定型(守り)CREAL50%・OwnersBook30%・COZUCHI20%約53,940円実績開示の具体性・運用実績の長さを重視する2社(CREAL・OwnersBook)を中心に据える構成
配分比率は当メディアが例示のために設定したものであり、特定の配分を推奨するものではありません。想定年間利益は各社平均想定利回りの単純な加重平均(単利ベース)であり、複利再投資や税金は考慮していません。

分散の効果を、実際に起きた事例で考える

業界全体の破綻・元本割れ率という統計は今回の調査では見つけられませんでした(不動産クラウドファンディング 協会は「元本割れは原則未発生」としています)。一方で、OwnersBookの詳細記事で 触れた通り、12年の運用実績を持つOwnersBookでも、過去に大阪のホテル案件で1件、償還遅延の実例が あったことを確認しています。どれほど実績のあるプラットフォームでも、個別案件レベルでのトラブルが 絶対に起きないとは言い切れません。架空の確率ではなく、この実際に起きたパターンをもとに、 分散の効果を考えてみます。

上記バランス型ポートフォリオ(想定年間利益 約66,675円)のうち、 OwnersBookへの配分は25万円です。この25万円を2案件に集中させた場合と、10案件に分けた場合とで、 「うち1案件が同様の遅延に見舞われ、その案件からの想定利益が今年度中に実現しなかった場合」に、 ポートフォリオ全体の年間利益にどれだけ影響するかを試算しました。

結論から言うと、どちらのケースでも、100万円の元本は減っておらず、その年の最終利益もプラス(黒字)を維持します。違うのは「その黒字がどれだけ目減りするか」です。

分散の仕方1案件あたりの金額遅延した案件1件分の想定利益(今年度中は未実現)今年度の実現利益(66,675円が基準)その年は黒字か
2案件に集中125,000円約6,513円(約10%)約60,163円黒字を維持
10案件に分散25,000円約1,303円(約2%)約65,373円黒字を維持

2案件に集中させていた場合でも、100万円は約60,163円の 利益を伴って黒字のまま終わります。10案件に分けていた場合は約65,373円と、 ほぼ想定通りの利益に近づきます。元本1件が丸ごと消えるわけではなく、1年分の利益の一部が来年に持ち越されるだけという点が、 分散を効かせておくことの本質的な安心材料です。もちろんこれは、遅延した案件が最終的には償還される(元本が戻る)ことを 前提とした試算です。ヤマワケエステートのケーススタディで解説している通り、 事業者の経営状態によってはこの前提自体が崩れる可能性もあるため、運営会社の財務状況・行政処分歴も あわせて確認することを推奨します。

最低投資額はTECROWD(10万円〜)を除く3社が1万円〜であるため、同じプラットフォームの中でも複数案件に分けることで、 1件のトラブルがポートフォリオ全体の利益に与える影響を大きく抑えられることが分かります。これは 「プラットフォームを分ける」分散だけでなく、「同じプラットフォーム内で案件を分ける」分散も有効であることを示しています。

このシミュレーションは実際に報告された事例パターンを参考にした仮定計算であり、 今後同様の事象が起きる確率を示すものではありません。また元本毀損(減少)ではなく資金化の遅延を 前提とした試算です。

プラットフォームの見極め方について、より体系的なチェック項目は「不動産クラファンの見極め方」で解説しています。

投資家タイプ別 早見表

各社の詳細記事で述べた「参考になりやすい投資家像」を、比較しやすいよう1枚の表にまとめました。 あくまで当メディアの分析に基づく整理であり、断定的な推奨ではありません。

重視したいポイント特徴が近いプラットフォーム
実績公開・上場グループ運営の透明性CREAL
運用実績の長さ・確定利回りの個別開示OwnersBook
個別案件を自分の目で見極めたいCOZUCHI
海外不動産への地理的分散TECROWD

簡易診断:何を優先したいかで整理する

「結局どれを見ればいいか分からない」という方向けに、本記事の分析結果を簡単な分岐で整理しました。 どれか一つに決めるためのものではなく、詳細記事を読む優先順位をつけるための目安としてご利用ください。

Q1. 上場グループによる運営・実績公開の透明性を何より重視したい
→ はい:CREALの詳細を読む価値が高そうです
→ いいえ:Q2へ
Q2. 運用実績の長さ・個別ファンド単位での実績開示を重視したい
→ はい:OwnersBookの詳細を読む価値が高そうです
→ いいえ:Q3へ
Q3. 為替・カントリーリスクを理解した上で、海外不動産にも分散したい
→ はい:TECROWDの詳細を読む価値が高そうです
→ いいえ:COZUCHIの詳細(個別案件の見極めが前提)を読む価値が高そうです

4社それぞれの一言まとめ

プラットフォーム一言まとめ詳細
CREAL実績公開・上場グループ運営の透明性。効率よりも手堅さ重視。詳細レポート →
COZUCHI平均値と中央値の乖離が大きい。個別案件の見極めが重要。詳細レポート →
TECROWD国内唯一の新興国不動産案件。カントリーリスクの評価が鍵。詳細レポート →
OwnersBook業界最長12年の運用実績。貸付型という異なるスキームに留意。詳細レポート →

まとめ

4社はそれぞれ異なる設計思想を持っており、「どれが優れているか」という単純な優劣では語れません。 利回りの高さを取るか、実績の裏付けを取るか、案件の分散度を取るかは、投資家自身のリスク許容度と 目的次第です。本記事および各社の詳細レポートが、その判断材料の一つになれば幸いです。